【書評】『あわいの力』を読んで思った教師として大切にしたい3つのこと

  • 2017年3月29日
  • 2017年3月29日
  • 書評
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こんにちは!

安田登著『あわいの力』を読みました。

現代人が忘れかけている大切なものがたくさん詰まっている本当に素晴らしい本です。

教育に携わっているものとして、忘れてはいけない大切なものがあると感じたので紹介させていただきます。

『あわいの力』の概要

『あわい』とは『間』を意味します。

『あわいの力』とは、『何かと何かをつなぐ、媒介する力』のことです。

甲骨文字の研究をしていた安田さんいわく、『思考』(本の中では『心(こころ)』と表現していますが)が生まれたのは文字が生まれてからなのだそうです。

 

『思考』が発達する前、人類は身体感覚に根差して生きていました。

しかし文字を使い始めて、脳で思考をすることが増えた結果、人間はどんどん『脳化』していきます。

そして現在、肥大化した『思考』は、精神疾患や自殺など様々な副作用が生み出してしまいました。

 

この思考の副作用を乗り越えるために必要なことが『あわいの力』だと言います。

現代人が忘れかけている『あわいの力』とは何なのか?

能楽の『ワキ』の役割を皮切りに安田登さんが紹介してくださっています。

教育者として忘れてはいけない3つのこと

本を読んで感じた、教育に携わる者として大切にしたいものを書いていこうと思います。

身体感覚の重要性

2016年、大手企業で過度な労働による悲劇的な事件が起きてしまいました。

他にも、身体を壊すまで働いたり、鬱になるまでストレスを抱え込んだり、そんな話はよく聞きます。

 

そんなになるまで追い込んだ外部の環境も悪いと思うのですが、なぜそこまでして耐えねばならなかったのか?という疑問は残ります。

ストレスを感じるときって、胸がもやもやしたりムカムカしたりしますよね。

よりひどくなってくるとお腹や頭が痛くなったり、実際に異常をきたすはずです。

 

それって身体からの警告なんだと思うんです。

でも、それを無視して無視して無視し続けると、鬱になったり、ひどいと自殺に追い込まれてしまったり、そんなことが起きてしまうんだと思います。

 

思考が発達する前、人間は自分の身体感覚に根差して生きていました。

自分の身体と常に対話をしているから、身体のメッセージを素直に受け取ることが出来てたんです。

 

自分らしく生きるためにも、健康に健全に生きるためにも、この身体感覚は必要不可欠だと思っています。

これからを生きる子供たちにも、この身体感覚は大切にして欲しいなと思います。

どうやったらこの力を取り戻せるのかはまだ分かりませんが・・・

長期的な視野を持つこと

以下は能楽師の方が、能のお道具である「笛」を買ったときの話です。

能で使うお道具はすぐに音が出ないことが多いそうなんですね。

毎日吹き続けていれば、数十年後に鳴り始めるかもしれない。

が、ひょっとすると、その人が生きているうちには音が鳴らないかもしれない。

じつは全然だめかもしれない。

でも、吹くことをやめたら、その笛が鳴ることは絶対にありません。

代々受け継ぎ、何百年後かにようやくいい音が鳴り始めるということもあるかもしれません。

本当に「良い笛」なのかどうかは、かなりの時間が経たないと分からないのです。

(安田登『あわいの力』より)

仕事柄、受験指導をすることもあるのですが、やはり目に見える結果を追い求めすぎてしまいます。

第1志望に合格させることが出来なかった子には、何も力になれなかったんじゃないかと自身の無力感を感じることがよくあります。

 

でも、その目標を目指す過程で生徒は大きく成長しているはずなんです。

そのときはダメだったとしても、人生という長いスパンで考えれば、その1年に大きな意味があるはずなんです。

 

もちろん、生徒が喜ぶ結果も重要です。

でも、目先の結果だけでなく、生徒の人生全体を俯瞰していられる存在でありたいなと思います。

教師の役割は『ここではない世界』と生徒をつなぐこと

「ここではない世界」を見せるのが、教育の本来の役割だと思うのです。(安田登『あわいの力』より)

内田樹さんも「教育の本質は巻き込まれることだ」と言いました。

この考えの重要なところが、視座、すなわち視点をあげることなんです。

 

現在は教育がサービス化していると言われています。

サービスと言うのは、欲しいものを得るために必要な対価を払うという、等価交換の経済システムを指します。

例えば、プログラミングを習いたい場合、このコースを終えたらどの程度スキルが付くのか分かっていて、それに見合うお金を払います。

つまり、教育を受ける前に、ある程度結果が予想できるわけなんです。

 

でもそれでは、自分という枠の中で想定した成長しか得られません。

今の自分の延長線上にしかたどり着けないんです。

 

教育に求められることは、生徒自身の枠を超えるような何かを提供し、生徒の視座をあげることなんです。

そのためにも教師は、ここではない世界を生徒に感じさせ、生徒が知らない世界と彼らをつなぐ『あわい』であるべきなんです。

自分自身もそのように生徒の好奇心を刺激できる存在でありたいなと思います。

まとめ・何度も手に取って読みたい本

以上、安田登さんの『あわいの力』の感想を書いてみました。

昨年読んだ中でも最も印象に残り、何度も読み返した本です。

今回、教育者の視点として書いてみましたが、この本には現代人が忘れかけている大切なものがある気がしています。

気になった方は読んでみてくださいね。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

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